Keep Portland Affordable―ポートランドをお求めやすいお値段で

「Keep Portland Weird」(いつまでもヘンテコなポートランドでいよう)というキャッチフレーズは有名だけど、新しく「Keep Portland Affordable」(ポートランドをお求めやすいお値段で)という言葉も必要かもしれない。もう手遅れかもしれないけど。

Photo By Tsubo

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ポートランドの住宅価格、賃料はものすごい勢いで上がっている。今やポートランドは全米で最も移住者の多い都市のひとつ。2007~10年の人口増加率6.6%は、アメリカ西部の主要都市の中で最も高い(The Case for an Oregon Patent and Trademark Office調べ)。限られた住宅供給の奪い合いが相場をどんどん吊り上げている。いまこの瞬間にも、激しい家賃の値上げに遭って、長く住み慣れた家を追われ、もっと狭いアパートや、遠いところに引っ越さなければいけない人がたくさんいる。

この状況はもはや制御不能かもしれないけど、値上がりの理由はとてもシンプルだ。住宅金利、全米平均なんて統計的な話も大事だし、ほとんどのメディアはそういうことに触れているけど、そんな数字の話はとりあえず置いといて、ポートランドで生まれ育った私としては、”How much”よりも”Why”に焦点を当てて話したい。

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ポートランドは古くから、フレンドリーな人たちが暮らす安全でクリーンな街として知られてきた。すぐ近くに海、山、川もあって、アウトドア好きにはたまらないロケーションも魅力だ。大き過ぎない街だから、移動に時間もかからない(最近の交通量の増加で少し状況は変わってきているけど)。でも、多様な美味しい料理、メジャースポーツのチーム、刺激的なナイトライフなど、大都市にも負けないコンテンツが揃ってる。つまりポートランドは、公害、犯罪、交通渋滞といった大都市特有の問題に苦しむことなく、大都市と同じ恩恵を受けられる街ってこと。

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さらに、ポートランドは気候にも恵まれている。冬の大雪、夏の酷暑、そしてハリケーンやトルネードといった自然災害もほとんどない。暗くて雨ばかりの冬は悩みの種だけど、素晴らしすぎる他の条件を考えると、そのくらいはお安いものだって気付く。ポートランドでは、四季の移ろいもはっきりと楽しむことができる。冬の雨はあまりいいものじゃないかもしれないけど、秋には木々が美しく色付き、春にはたくさんの種類の花が咲く。そして、控えめな私をもってしても、ポートランドの夏はパーフェクトだと断言できる。

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成長するビジネスとハイテク産業も、ポートランドに人を呼び寄せている。Nike, Intel, Presicion Castparts, Columbia Sportswearといった大企業の他にも、小さく個性的なベンチャー企業を育むカルチャーがポートランドにはある。そんな成長するビジネスエリアは、とりわけHighway 26を西に進んだヒルズボロ(Hillsboro)、I-5(Interstate Highway 5)を南下したテュアラティン(Tualatin)、ウェストリン(West Linn)などの郊外の町に広がっている。ポートランド市の中心部にはもうあまり土地が余っていないけれど、郊外にはそれを十分補える土地がある(そして実際にそうなっている)。

大地震がやってきて、ポートランドと沿岸の街をすべて滅ぼすようなことでもない限り、オレゴンがこの3年で最も移住者の多い州のひとつだってことは少しも不思議じゃない。そして、その移住者のほとんどはポートランドのメトロエリアに押し寄せている。アクセスの良さ、気候、ビジネスチャンス。そのどれをとっても、アウトサイダーにはポートランドが魅力的に映る。さて、そう言えばまだ本題の住宅価格の話をしていなかったね。

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もちろん、生活費の安さもポートランドの魅力のひとつ”だった”(ネイティブ・ポートランダーの私から見ると過去形になってしまうけれど)。でも、アウトサイダーにとっては、”今でも”安い。もっと生活費の高い他の大都市に暮らす人の目から見れば。例えばサンフランシスコのダウンタウンに住んでいた人がポートランドに引っ越すとしよう。住宅価格はたとえ不動産屋の言い値そのままでも、ベイエリアで手に入るどの物件よりも安いはずだ。ニューヨーク、シアトル、サンディエゴなどの都市でも同じことが言えるだろう。ポートランダーにとっては法外に思える住宅・賃貸価格の高騰だけど、広く全米を見渡せば、こんなのまだまだバーゲンセールみたいだって感じている人もたくさんいる。

訳者注:参考までにこの図を見てほしい。ポートランドの高さも勿論分かるけど、それよりもサンフランシスコの異常さの方に目が行く。

今まで述べてきた他にも、価格急騰の大きな理由の一つとして、「ポートランドはこんなに人気になることを想定していなかった」ということがある。ポートランドで生まれ育った人に聞いてみたら、みんな口を揃えて、静かであまり人に知られていないのがいいところだったって言うだろう。街の英雄的存在である1970年代の市長トム・マッコールの有名な言葉がある。「何度でも、何度でも、ポートランドに来てほしい。でも、どうかお願いだから、ここに住みつかないでほしい」

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彼の言葉が物語っているのは、ポートランドが、今の移住者の数を受け入れられるように計画されてこなかった、ということだ。だからこそ、数少ないアパートや住宅をめぐっての激しい入札競争が起きている。もちろん、彼の態度は、ポートランドを小さくて住みよい街として保つという目的から来ている。しかし、ポートランドは”見つかってしまった。” 今やポートランドのネイティブたちは、生活費の上昇とともに、”隠れた楽園”での暮らしが終わってしまったことに戸惑っている。

今、住む家を探すのに悪戦苦闘している人を身近に見つけるのはとても簡単だ。他の州での仕事を終えて最近ポートランドに帰ってきた友人は、手ごろな値段のアパートを探したけれど見つからなかった。結局彼は、高いアパートに”無駄遣い”するよりは、両親の実家に住むことを選んだ。彼はマイホームの頭金のために貯金することに決めた。それは、毎月高額の家賃を払っていたら決して不可能だった。また、別の友人たちは同じアパートに何年も住んでいるけど、この先も住み続けられるかは分からないと言っている。彼らのアパートの家賃は、1年前に300ドル値上げされた。次回更新時に家賃を払う余裕はもうないかもしれない。

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親戚の一人も初めてのマイホームを探しているけど、手ごろな値段の家が売りに出されると、すぐに複数のオファーが舞い込んで、提示された価格よりも2万~5万ドル高くなることが普通みたいだ。例えば最近、34万9,000ドルで売りに出された家が最終的に40万ドルで売れた。しかも現金一括払いだ。今やポートランドで家を買うなら現金一括が常識だと多くの不動産業者も認めている。もちろん、既にマイホームを持っている人にとっては、今の状況は素晴らしいことだろう。昨年5月に家を買った私の同僚は、Zillow’s “Zestimate”という不動産情報サイトで調べたところ、たった1年足らずの間に資産価値が5万ドルも上がっていたそうだ。

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Rent Jungleによると、ポートランド市内から10マイル圏内の1カ月の家賃の平均は、1ベッドルームで1,266ドル、2ベッドルームで1,456ドル、スタジオ(日本でいうワンルームのようなもの)で約1,000ドル。Rent Jungleが公表している最も古いデータである2009年では、1ベッドルームで810ドル、2ベッドルームで905ドルだ。つまり、平均家賃は年率8%以上で上昇している計算になる。これに対して、OREGONLIVEによると、州内の最低賃金は2009年の8.40から2015年の9.25のように、年率たった1.62%しか上がっていない。すごい昇給を勝ち取った人か、たくさん貯金のある人でもない限り、同じアパートに住み続けるのは、もはや高すぎる。そのような人にとっては、もっと狭いところか、中心部からもっと離れた郊外へ引っ越す以外に選択肢はない。

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最近アメリカでよく聞かれる「ジェントリフィケーション」という都市開発におけるキーワードがあるけど、ポートランドもそんな様相を呈している。中心部に元々住んでいた人々が、家賃の上昇とともに家を追われ、西のビーバートンやヒルズボロ、東のグレシャムのような郊外への引っ越しを余儀なくされている。同様に、初めて家を買うような人にとっては、中心部に近い物件には手が出ず、遠く離れた郊外を選ばざるを得ない。こうして、中心部の優良物件は数多くの裕福なアウトサイダー(もちろん、裕福なポートランダーもたくさんいるが)の手にわたっていく。

これだけ価格が上がっていると、日本からの留学生や移住者にとっては、どこの、どのくらいの広さの家を選ぶかは難しくなっていると思う。予算や間取りの希望にもよるけど、ダウンタウンに近い場所を望むならスタジオもしくは1ベッドルーム、もし2ベッドルームを望むならビーバートンかもっと遠くを選ばざるを得ないかもしれない。でも、新しいアパートのスタジオは、古いアパートの2ベッドルームよりも高い可能性もある。公共交通機関へのアクセス(例えば、MAX Light Railの駅に近いとか)、駐車場の有無なんかの要素も価格に影響する。どこが良くてどこが悪いとは言えない。結局は、予算、場所、質を考えて妥協点を探すという答えしかない。

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これからどうなるか?それは地震予測と同じで難しいけれど、長い目で見てポートランドの住宅費はもっと高くなっていくだろう。移住者はこれからも増える以外には考えられない。でも、価格の上昇はどこかで頭打ちになるはずだ。いや、”なってくれるはず”と強く期待したい。いつか需要と供給のバランスが取れる日が来ることを願ってやまない。

デベロッパーは今いたるところにアパートを建設している。やがてはそれが需要をいくらか吸収してくれるだろう。郊外にもアパートはどんどん建てられている(市の行政がそれを支援しているか、あるいはやめさせようとしているか、ということもあるけど、それはここでは触れない)。住宅金利は緩やかな上昇傾向にある(最近の経済的混乱で上昇は少し止まっているけれど)。それがいくらか住宅価格を安定させてくれるだろう。でも、ポートランド人気が継続して、収容できる以上の勢いで人が流入してきたら、当然値段は上がり続けるだろう。これは、需要と供給の基本だ。

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まとめると、この記事の目的は、何故家賃や住宅価格が上がり続けているのかをシンプルな言葉で説明することだった。この価格上昇は誰かが仕組んだものではなく、アメリカ人がポートランドの素晴らしさに気付いてしまった結果という、とてもシンプルな理由によるものだ。増え続ける出費に見合うだけの価値がポートランドにはあるか、という疑問も出てくるけど、この街は、素晴らしい生活環境を与えてくれる、というのは事実だ。価格上昇を嘆いてばかりいるのではなく、むしろ今までポートランドがレーダーに感知されずに飛行できていたことを感謝すべきかもしれない。西海岸、東海岸の他の大都市に比べると、まだまだ安いのだから。もしかしたら、近い将来には追い着いてしまうかもしれないのだけど。

日本語訳:Masaki

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