アイダホといえばポテト? オレアイダ創業の地。州境の町オンタリオに行ってみる

ポートランドのあるオレゴン州の北隣はワシントン州、南隣はカリフォルニア州。そして東隣にあるのがアイダホ州。

出典:Wikipedia

 
アイダホと聞いて思い浮かぶのは、たぶんポテトだと思う。多くのアメリカ人にとっても、そういうイメージなのは同じ。実際に、州別のポテト生産量はアイダホがダントツでトップ。車のナンバープレートにも「Famous Potatoes」と書いてある。

ちなみにオレゴン州もポテト生産量で第4位につけている。オレアイダという言葉を聞いたことがある人も多いと思う。日本のスーパーでも売っているフライドポテトのブランド。そのオレアイダの由来は「オレゴンとアイダホ」。そのまんまの名前通り、オレアイダの創業地は、州境のオレゴン側にあるオンタリオという小さな町だ。オレゴン州とはいっても、ポートランドとは600 km離れていて、車で6時間かかる。
1952年に創業した当初の社名はOregon Frozen Foods Company。社名をオレアイダに変えたのは1961年。そして1965年には、トマトケチャップで有名な大手食品メーカー・ハインツの子会社になっている。

オレアイダが生み出した大ヒット商品が「テイタートッツ」。これは、フライドポテトを作るときに出るポテトの切れ端を有効活用できないかというアイデアから生まれた。切れ端を細かく砕いて小麦粉と調味料を加えて一口大の大きさに切り出したもの。外はカリカリ、中はホクホク。ハッシュドポテトを小粒にしたような食べ物と言えばわかるかもしれない。すでにほんのり塩味がついていて、そのままでも食べられるけど、辛いケイジャンソースをかけたり、チーズをかけてナチョス風にしたりと、色々なアレンジで食べられている。アメリカではファストフードやバーのおつまみとして定番メニューだけど、日本ではあまり馴染みがない。アメリカでは看板商品なのに、なぜか日本のオレアイダの商品ラインナップにテイタートッツは入っていない。知られていないだけで日本人にも受ける味だと思うけど、どうしてだろう。

これがオンタリオのオレアイダ工場。今は世界第5位(2018年売上)の巨大食品メーカー「クラフト・ハインツ」の傘下。ベンチ脇のゴミ箱にはマクドナルドのドリンクカップが捨ててあった。フライドポテトと言えばマック。だからどうした、と言われるかもしれないけど、なんかちょっとうれしくなった。

工場は休みの日で閑散としていた。写真を撮っていたら守衛のおばちゃんが出てきて、「何してるの?」と話しかけてきた。休みの日に、辺鄙な田舎町にある工場にやってきて写真を撮ってるアジア人なんて、どう考えても怪しい。「ヤバいことになるかもしれない…」と身構える。何しろ相手は世界的大企業。

「あ、ぼくは日本人旅行者なんですが、ここが有名なオレアイダの創業地だと聞いて、興味で写真撮ってただけなんです」と正直に説明したら、「そうなのよ。ここで今もあの有名なテイタートッツを作っているのよ」と誇らしげに説明してくれた。怒られなくて本当に良かった。冷汗かいた。

これは工場の裏側から。貨物の引き込み線もあって、要塞のような威容にうっとりする。このオレアイダ工場には1000人以上の従業員が働いている。オンタリオの人口は1万1千人だから、単純計算すると10人に一人の割合。もちろん従業員全員がオンタリオ市民ではなく、アイダホも含めた近隣から来ているだろうけど。
 

オレゴン・アイダホ州境は、イメージ通りポテト栽培も盛ん。Google Mapsの航空写真でオンタリオの郊外を見ると、円形をしたジャガイモ畑をたくさん見つけることができる。円形なのはアーム状のスプリンクラーで機械的に散水を行うため。

この場所の実際の風景。農閑期に訪れたから何もない。

買物で訪れた巨大なウォルマートにはたくさんの人がいた。駐車場に止めてあった車のナンバープレートは、オレゴンナンバーとアイダホナンバーが半々くらい。

ポテト売場の充実ぶりはさすが生産地。ポートランドの同規模のスーパーと比べると明らかにポテトの売場面積は大きい。ポートランドと比べて、全体的な物価が2~3割安いように感じた。ちなみに 5パウンドのポテトが 1.42ドルで売られていて、円とkgで換算すると 68円/kg。激安。

ここで州境の町オンタリオならではの小話をいくつか。

出典:Wikipedia

 
オンタリオはオレゴン州とはいえ、ポートランドなどのオレゴン主要都市からは遠く離れてる。むしろアイダホ州の州都ボイシ(Boise)まで1時間ほどの距離にあって、そちらとの結びつきの方が強い。そんな事情からオンタリオは、アイダホ州と同じ山岳部時間(MST, Mountain Standard Time)のタイムゾーンに入っているので、太平洋時間(PST Pacific Standard Time)を採用しているオレゴン州の大部分とは1時間の時差がある。オレゴン州内で山岳部時間に入っているのは、オンタリオの属するマルヒュア郡(Malheur County)だけ。さらに細かく言えば、マルヒュア郡のうち南の5分の1は太平洋時間という、なかなかややこしいことになっている。

州をまたげば、がらっと法律が変わるのもアメリカならでは。オレゴン州では2014年に娯楽用大麻が合法化された。でも、アイダホ州は依然として娯楽用も医療用も禁止。州境にあるオンタリオは、アイダホとの強い結びつきという地理条件から、オレゴン州の合法化に反して、市議会が娯楽用大麻の販売を禁止した。でも、市財政の逼迫という事情もあって、大麻による税収を確保すべきという声が高まり、2018年11月に住民投票を実施。賛成多数で販売が解禁されることに。その結果、アイダホの人々は、大麻を求め州境をまたいでオンタリオに殺到することになった。お客に占めるアイダホ住民の割合は、記録を取っているわけではないから正確には分からないが、オンタリオ市内の販売店オーナーによると「すごく多い」とのこと。ちなみに購入時には年齢確認のためにID(免許証など)の提示が必要なので、店側はそれによって客の居住地をおおよそ把握していると思われる(出典:KTVB.com)。
オンタリオ市の予算資料によると、マリファナによる見込歳入は114万ドル。市の歳入の内訳で最大の固定資産税が368万ドル(歳入全体の約半分を占める)だから、マリファナ解禁による税収増がいかにすごいことかがわかる(出典:City of Ontario)。
オンタリオにマリファナ屋を開店すれば儲かることがわかっているなら、市内がマリファナショップだらけになりそうなものだけど、そこは色々と規制をかけているようだ。例えば、市内のマリファナショップは14ケ所まで、隣の販売店とは1,000フィート離れていないといけない、学校、公園、住宅地の近くには作れない、などの規制がある(出典:KTVB.com)。

そんな話題を提供してくれるオンタリオだけど、観光が目的なら、ただただ退屈なだけの町だろう。行っても楽しいものは何もないから、わざわざ行くような場所ではないと思う。
でも、小さな町にもかかわらず、車はせわしなく行き交い、人の姿もわりと見かけたから、さびれた町という印象は持たなかった。クラフト・ハインツという大企業の工場があるおかげかもしれないし、上で取り上げたマリファナの話が物語るように、州境ならではの人の出入りの多さもあるかもしれない。大手メーカーの工場がある北関東の町と同種の雰囲気を感じた。ファスト風土とでも形容されるような単調な風景。ぼくはけっこうそれが好き。

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