若き女性オーナーによるオーガニックファームの日常をサンプリング―Able Farms

こんにちは。Noren 読者の皆様、はじめまして。ふだん、私は日本の雑誌などにライターとして関らせていただいていますが、その一方でLIFE sampling(ライフサンプリング)という地味〜に地道に、楽しく取り組んでいる活動もあります。そのご紹介も兼ね、こちら縁あって飛び入りライターとして参加させていただくこととなりました。どうぞよろしくお願いします。

まず、そのLIFE samplingとはなんなの? といったところから説明しますと、これは直訳すれば「ライフ=生活、暮らし」を、「サンプリング=試しに味見する、体感する」といった意味。既存のものを取り入れてミックスするだけではなく、そこからまた新しいものを創り出す、そして刺激を受けるというところまでを含んでいるのが肝な訳です。

そう、私たちが提供しているのはポートランドを訪れる人へのローカルライフのサンプリング。旅先でショッピングやカフェめぐりも、もちろんいいけれど、ポートランドをポートランドたらしめているローカルと過ごす、生の出会い、体験が持てたら、この街のすばらしさがもっと直に、特別に、パーソナルになるのではないかと、そしてそれぞれの日常に戻ったあとも、新しい何かのきっかけになるのではないかと、ちょっと本気で信じているのです。

それはメンバーである、Yuriと私、Sakikoが、まさにサンプリングしてきた経験の結果でもあります。この街で私たちは、もともと異国民のよそ者だった訳であり、この一風変わった地方都市に生きるいわゆる、ふつうの人たちとふれあうにつれて、ユニークで時に奇想天外、それでいて地に足のついたポートランドらしさの根本のようなものがゆっくりと見えてきたから。それを少しでも多くの人と共有したいとも思ったのです。

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Yuri(左から2番目)

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Sakiko(右端)

自己紹介兼ねて、前置きが長くなりましたがそんな私たちLIFE samplingが8月に開催したFarm to Tableの様子をお届けします。

会場となったのはポートランドの北西の果て、ソヴィーアイランドにあるAble Farms。弱冠35歳のオーナー、ミーガン・デントンがほぼひとりで実務作業を手がけるそこには果樹園と野菜畑が隣接し、鶏、七面鳥、牛、、、が敷地内でゆったりと過ごしている。そんなどこか幻想的牧歌的風景がポートランド市内に存在するという事実に、ローカルでさえ、驚きを隠せない人がほとんどです。

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この島へ訪れる理由は四季を通していくらでもあります。ベリーやきのこ狩りに湖畔でのキャンプやスイミング。そしてファームの数々。これほど自然豊かな環境にダウンタウンから車で20分、路線バスでも50分弱で来られるアクセスのよさもポートランドの醍醐味です。

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ミーガンのファームはこう見えて、アメリカではマイクロ(極小)規模。この島では、フルーツ狩りが体験できるところもいくつかありますが、彼女のファームは一般開放せずに、CSA(Community Supported Agriculture=地域で支えられる農業)制度を使って、近隣地域の会員消費者に毎週、収穫物を直接、受け渡しするのがメイン。ほかにもファーマーズマーケットに出店したり、またコーヒーロースターや飲料メイカーなど、ほかのローカルビジネスとともにフードイベントを催したり。そこではファーマーから一転、シェフの顔となって腕をふるいます。

10年以上、シェフだった経験あってのミーガンのいま。厨房に届けられたものをただ料理するだけの毎日(それがたとえローカルのファームからだとしても)に疑問を感じていた彼女は、料理の原点である食材そのものに心の軸が動いていったのだとか。超多忙なシェフ業の合間を縫っては、週に数回のボランティア通いから始め、それほど長い期間を置かずして、ファーマーとして独り立ちするに至った経歴。いまや七面鳥たちの母のように接するそのおおらかな様子からはなかなか察し難い、葛藤や苦労もあるはず。

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それでも「ファーマーでいられる今が一番幸せ」と屈託のない笑顔を向けるミーガン。この島で最年少ながら、一番キャリアの長い”オーガニック”ファーマーとして次世代を牽引している存在なのです。そんな彼女のバックグラウンドにも、参加者の皆さんにどんどん触れていって欲しい。ただ訪問して見学するだけではなく、ともに収穫し、準備し、そして何よりも食べて会話する時間を大切に共有してもらいたいという願いから、この機会は誕生しました。

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引っ越して来た当初はブラックベリーに覆いつくされていたという小さな果樹園からりんごやプルーンを、そのお隣の野菜畑からはズッキーニやトマト、ケールなどを各自で収穫。

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食べ方や収穫目処のヒントを会話のなかに散りばめていくミーガンに呼応するように、参加者の皆さんは、不思議そうに、ときに感動しながら野菜たちを手の中におさめていきます。

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ちなみに参加者層は、下は高校生から上は40代まで。年齢も職種も住まいもライフスタイルも参加のきっかけも異なります。でもほぼ共通していたのは「食を通して、何かが変わる、変えられる」と少なからず信じている人がほとんどだったこと。

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からだをともに動かしていくうち、そんな皆さんの内面が表出してきては、徐々に徐々に感じられました。そんな瞬間、私たちは平静を装いながらも、こころの中でこっそりガッツポーズしていたりするのです。

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ここがキッチン!

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野菜はグリルかサラダ。塩とオイルで必要最小限に味つけ。完熟トマトの甘さは、それだけで十分でした。

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収穫後の料理、テーブルセッティングまで自分たちでやり、参加者の方々は受け身ではなく主体性を優先すること。そんな私たちの計らいも優に超えた自主性のある集いとなりました。

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牛用の牧草がイス代り。

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「Farm to Table(農地(生産者)から食卓(消費者)まで、安全で新鮮な食材が届き、調理されるコンセプト)」ムーブメントがアメリカで最初に起こったのは90年代後半。ポートランドに実際にその波が目に見えてきたのは2000年代初頭と言れています。全米中の名シェフたちが最高の素材、それを培う肥沃な大地を求めてきた結果、そんな環境条件に恵まれたポートランドはシェフたちのハブとなった、と。

それから10年以上の時を経て、こんなふうに「Farm to Farm」が新しい主流になっていくのかもしれません。ファームで採れたものをファームで調理し、食卓を囲む。生産者と消費者、アメリカと日本という垣根を超え、食を通して自分たちならではのコミュニティを模索し、創っていく。ミーガンが目指し、いま舵を切りつつあるのもその方向。私たち「LIFE sampling」もまた、そんな潮流の媒介役であることを志しているのです。

Able Farms

web WEBサイト

ワークショップ主催
LIFE Sampling
問い合わせ:lifesamplingpdx@gmail.com

撮影/島崎 征弘

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