Courier Coffeeのジョエルに学ぶローストのこと、コーヒーのこと

コーヒーに関わる仕事ができているってことが今でも信じられないんだ ―そう語るジョエルの言葉の1つひとつは、コーヒーの哲学者のようだ。

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そんなジョエルと彼のコーヒーショップ「クーリエ・コーヒー」については、こちらを読んで欲しい。今回は「ロースト(焙煎)」のお話。

「ポートランドを訪れる人へのローカルライフのサンプリング」をコンセプトにしたイベントやワークショップを主催しているLIFE Samplingによるコーヒーワークショップから、コーヒーに疎いぼくが精一杯学んだことをお届けしたい。LIFE Samplingについて詳しくは、Able Farmsの記事で。

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ワークショップの舞台となったのは、ダウンタウンにあるコーヒーショップではなく、サウスイーストにある通称“シークレット・マイクロ・ロースター”と呼ばれる焙煎所。まさにジョエルの秘密基地だ。

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ジョエルがこの場所でローストを始めたきっかけは、人の縁。大学を卒業後、独学で必要最小限の焙煎器を組み立て、自宅バックヤードで焙煎を始めた彼は、その豆を常連のコーヒーショップに持参し意見をもらったり、友達にふるまう日々を過ごす。そのうちに噂が広がって、個人オーダーや卸先が増えていった。
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ある人から「ここを使って欲しい」というオファーを受けたのは、そんな頃。今も活躍する本格的な焙煎器も同時に譲り受けた。冒頭のジョエルの「今でも信じられない」という言葉は、こんな特別な縁の連続からも来ている。

3時間以上に及ぶワークショップでも、コーヒー哲学者ジョエルの話は尽きなかった。その全てを伝えることはできないから、ここでは、印象に残ったいくつかのことを書いていく。コーヒーワークショップは今後も開催されるようなので、詳しくはそちらをチェックしてみてほしい。

―コーヒーのローストはタマネギを炒めるのと同じなんだ

大げさかもしれないけど、素人のぼくにとって、ローストって魔法か何かのように思えてしまう。

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「ローストを難しく考える必要はない。すごく簡単なんだ。基本的には同じ作業の繰り返し。だから、決してエキサイティングな仕事ではないんだけどね」と笑うジョエルは、コーヒー豆のローストを、タマネギを炒めることに例える。

ツンと刺激のある生のタマネギに熱を加えると、キツネ色になって甘みが出てくる、あの原理と同じなんだって。

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そして煎り加減を例えるなら、ステーキがパーフェクトな例なんだとか。レアからウェルダンまで、好みは色々。 コーヒーの煎り加減も好みは色々。分かったような、分からないような。聞いているとステーキが食べたくなってきた。

―日本は深煎り、ポートランドは浅煎り

日本とポートランドのローストのトレンドの違いについても説明してくれたジョエル。

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日本ではどちらかというと長めのローストが主流。そうすると、苦味が味のメインになるんだとか。

対してポートランドを含めたアメリカ西海岸では短めのローストが主流なんだって。これは、コーヒーも果実のひとつとして捉える考え方で、素材の特徴を生かして、酸味、甘み、苦味をバランス良く出すためだとか。

日本のコーヒーを飲み慣れている人からは、ポートランドのコーヒーは酸味が強めだって感想をよく聞くけど、それはこういうところから来ているみたい。もちろん、好みは人それぞれ。

ちなみに、日本は○○分、ポートランドは○○分、と具体的なローストの時間まで教えてくれたんだけど、ここでは内緒。

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焙煎器の構造も解説してくれたジョエル。日本とアメリカでは構造も違うらしい。どう違うかは、専門的すぎてぼくにはよく分からなかったけど。

―ローストしたてが美味しいわけじゃないんだ

話題はコーヒーを美味しく飲む方法に。

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コーヒーが美味しいタイミングは、ローストしてから3~5日後なんだって。それから、コーヒーを見る時は明るい場所で、グラインドの具合にも気をつけてみよう。グラインドされた粒の形が“不均一”であることが美味しいコーヒーの条件。どうしてそうなのか? ワークショップでは詳しく解説してくれたけど、ここでは内緒。

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ジョエルが使っているのは23金をコーティングしたフィルター。金はあらゆる素材に反応しにくい物質で、金属臭が付かないこと、大事な油分をちゃんと通してくれるって特長があるんだって。紙や布のフィルターは油分がスタックしがちなんだとか。

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使い捨てのフィルターを使わなくていい、洗う水の量を少なくできて無駄がない、ということも、金のフィルターを使う理由のひとつ。このあたりは、大学で環境学を専攻し、環境に対する意識の高いジョエルならでは。

美味しいコーヒーを飲みたかったら、カップやフィルターを洗う洗剤にも気をつけてほしいという言葉もぼくには印象的だった。

「例えば肉料理を食べたお皿と一緒に洗ったりしたらどう? 当然、コーヒーの味も変わってくるよね」

―信頼できるブローカーの条件とは?

参加者からの質問に応え、コーヒー豆の仕入れについても話してくれたジョエル。

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いいコーヒー豆を仕入れるにはブローカーとの信頼関係が大切。自分で農家を訪ねて本気で関係を構築しようとしたら、時間はいくらあっても足りない。そこは信頼できる人に任せるべき、と話すジョエル。

それなら、信頼できるブローカーの条件とは?

「一言では言えないけど、小規模でやってるブローカーは信頼できることが多いかな。例えば一人のブローカーは、シングルで子育てしていて、鶏を飼っていたり、車がポンコツだったり、お金持ちっていうブローカーのイメージをいい意味で裏切る人間味のある人。電話で質問すれば、何時間でもとことんつき合ってくれたり、リサーチしてくれたりするんだ」

―夢は常にコーヒーショップなんだ

最後に理想のコーヒーショップについて熱く語ってくれたジョエル。

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「美味しいコーヒーを淹れることは勿論だけど、それは一番大事なことじゃない。いくらコーヒーが美味しくても、接客が悪かったら、そんなお店には、自分なら行かないだろうね。そこに集まる人が好きで、通いたくなる、そんなお店が理想。コーヒーでお客さんと繋がって、笑顔になってもらうことが目的なんだ」

日本に訪れた時には、毎日のように喫茶店やコーヒー巡りをするジョエルは、日本のカフェ事情にも詳しい。ワークショップの参加者からは「日本でオススメのカフェはどこ?」「ポートランドでオススメのカフェは?」という質問も。どちらの質問にも、数件の具体的なお店の名前を挙げてくれたジョエル。どこかって? それは是非ジョエルに直接聞いてみよう。

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5人以上参加者が集まればワークショップは開催可能とのことなので、興味を持った方は下記LIFE Samplingまで問い合わせてみてほしい。ちなみにワークショップでは日本語での逐次通訳も入るので、英語に不安がある方でも安心して受けられる。

LIFE Sampling(ワークショップ主催)

問い合わせ先:lifesamplingpdx@gmail.com

Courier Coffee

place923 SW Oak St Portland, OR 97205

timeMon – Fri : 7am. – 6pm. Sat&Sun : 9am -5pm.

webWEBサイト

その他 :Wi-Fi 有

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