ハッピーアワー・ハンター その6 Asian Noodles

汁に浸った麺類が食べたい。飲んだ後は特に。飲んだ後のラーメン、いわゆるシメラーは至福の瞬間だけど、飲んだ翌朝に食べる、うどんやそばも体に沁みる。ポートランドにはラーメン屋もまだまだ少ないし、そば屋なんてそもそも無い。その代わり、たくさんあるのは、タイ、ベトナム、中華といったアジアン・レストラン。ポートランドの美味しい汁と麺はそこにある。

アジアン・レストランは朝早くから開けているお店もけっこうあるから、飲んだ翌日の朝ごはんによく利用してる。アジアン・ヌードルといって真っ先に思い浮かぶのは、ベトナムのフォー。あっさりしたスープと、やさしいライスヌードルが飲んだ翌朝の体に沁みる。

スタンダードなフォーと言えば、ビーフでダシを取ったフォー・ボーと、チキンでダシを取ったフォー・ガー。ぼくも定番のフォーは大好きで、しょっちゅう食べてるけど、お店はたくさんあるし、どこで食べても安定の美味しさなので、ちょっと変わったものを紹介したいと思う。

Pho Oregon には、定番のビーフ汁、チキン汁のフォーの他に、ポークでダシを取った麺がある。といっても、豚骨ラーメンのような白濁スープではなく、透き通ったあっさりスープ。それでいて、ほのかに感じるラーメンっぽさが、日本人好みの味。薬味のフライドオニオンが香ばしさを加えてる。たぶん大阪の人しか分からないと思うけど、これって揚子江ラーメンに似てるなあ。ライスヌードルとエッグヌードル(中華麺)が選べるんだけど、このスープには断然エッグヌードルが合う。料理の名前は「Mi dac biet」ってなってるけど、それだとよく分からないので、番号で「24番」を注文しよう。9.45ドル。ここの定番のフォーももちろん美味しいのだけど、このメニューは他のお店にないので、毎回こればっかり食べてしまう。お店は9時開店だから、朝ごはんにもおすすめ。

フォーと並ぶベトナムの麺料理 Bun Bo Hue(ブンボーフエ)は、ベトナム中部の街フエの名物で、英語ではSpicy beef noodle soupって言われることが多い。フォーと同じくビーフベースだけど、レモングラスや魚介塩辛の風味が効いたスープはもっと濃厚でスパイシー。ちょっとクセが強いので好みは分かれると思うけど、ハマる人にはハマる味。麺はちょっと太めで丸みのあるライスヌードルで、歯ごたえが無くフニャフニャした食感が意外とクセになる。ポートランドのベトナム料理店でも、ブンボーフエを出しているところはたくさんあるけど、お店によって味はけっこう違う。

そんな中からオススメしたいのは、その名も Bun Bo Hue Restaurant。直球な名前だからこそ専門店という期待が膨らむ。店に入った瞬間に漂う魚臭さと、飾らない店内の風情が相まって、日本の田舎の漁港近くでやってる磯料理の食堂に来たような雰囲気。ここも朝食にぴったりの朝9時開店。

ここのブンボーフエは、通常サイズが9ドルで、スペシャルサイズは11ドル。豚の血を固めたゼリーみたいな具やら、骨付きの豚足やらがごろごろ入ってる感じは、本場の味に忠実な雰囲気。本場の味知らないけど。ちなみに、豚足と血の固まりが苦手な人は、言えば抜いてくれるらしい。別皿の野菜盛りは、モヤシやキャベツ、それ以外にも香草がいっぱいついて来て、通常サイズでもかなりのボリューム感。小皿で付いてくる唐辛子汁で、辛さを調節しながら食べられるのもうれしい。スープは濃厚だけど後味はあっさりしていて、胃にもたれない。

エグさ控えめのマイルド系ブンボーフエなら、Ha VL Sandwiches。名前の通りベトナム風サンドイッチのバインミー(bánh mì)のお店だけど、むしろヌードルの方が人気。メニューは、毎日2種類の麺を曜日ごとにローテーションするシステム。

ブンボーフエ(9.5ドル)が食べられるのは土曜日だけ。クセを抑えたマイルドスープに、具も薄切り牛肉、豚チャーシュー、フィッシュボール(魚の練り物)とか、みんな食べやすいセレクション。そして、どこよりも早い朝8時開店。お店はご近所のベトナム系のおっちゃん達の溜まり場にもなってて、外のテーブルには、朝からコーヒーで談笑するおっちゃんたちでいつも賑わってる。

Pho Van のブンボーフエもおすすめ。他のお店に比べて甘辛のコッテリ系だけど、魚臭さはなく、レモングラスをよく効かせたスープは女性受けが良さそう。具は牛と豚のスジ肉がごろごろ入っててコラーゲンたっぷり。11.5ドル。

次に紹介したいのが Khao Soy(カオソーイ)。一言で表現するならタイ風カレーラーメン。タイ北部の街チェンマイの名物料理で、別名チェンマイ・ヌードルとも呼ばれる。オススメするお店は、こちらも直球な名前の Khao Soy Thai Restaurant。

看板メニューのカオソーイは11.95ドル。ココナッツミルクのたっぷり入った濃厚なカレースープに中華麺。上にはカリカリに揚げた麺も乗ってたりして、かなりのガッツリ系。お腹いっぱい食べたい時におすすめ。

ちなみに、このカオソーイはタイ風のカオソーイ。実はラオス風のカオソーイというのもあって、そっちはまったく別の料理。ラオス風のカオソーイが食べられる Jade Bistro & Patisserieは、料理も雰囲気も洗練されてて、何食べても美味しい。ベトナム料理店だけどアメリカ人の味覚に合うようにアレンジされてて、お店はいつも賑わってる。オーナーがフランスで修行した経験もあって、マカロンとかのお菓子も名物。

ラオス風カオソーイは、きしめんみたいな幅広のライスヌードルで、トマトと豚挽肉を炒めた具が入ってる。ピリ辛だけどあっさり系のスープは日本人好みの味。

そしてここにはタイ風のカオソーイもあって、間違えないように、チェンマイ・ヌードルという名前でメニューに載ってる。ここのチェンマイ・ヌードルは王道のものとはかなり違うこの店のオリジナル。スープは一般的なタイ料理店で出されるものと比べて、粘度が低くてマイルド。具は揚げ麺と蒸し鶏。薬味として生の長ネギやタマネギも入ってたりして、日本風のカレーうどんみたい。きっと日本人ならほっとする味。

中華系ならKenny’s Noodle Houseのワンタンメン。

透き通った見た目の想像を裏切る濃厚なエビスープが、細麺に良く絡む。ワンタンもエビたっぷりでプリプリ。お財布にもやさしいレギュラー 6.15ドル、ラージ7.15ドル。

ところで、今回紹介したお店の Bun Bo Hue とか Khao Soy とかは、料理の名前をそのまま店名にしてる真っ直ぐさに惹かれて食べに行ってみたら当たりだったというパターン。ぼくは、ヒネらない直球な名前が大好きなんだけど、そんなぼくが度肝を抜かれたお店が東京にあった。

そのお店の名前は「中華料理 中華」。なんかもう、直球過ぎてむしろ斬新。いきなりど真ん中に豪速球を投げ込まれて、茫然と見逃し三振に倒れた気分。誰もが思い付きそうなのに、誰もが無意識に選択肢から除外してしまっているエアポケット。そんな言葉をしれっと選び出せる才能に嫉妬した。いや、このお店の人はきっとそんな深いことは考えてなくて、ただなんとなくとか、考えるのがめんどくさかったとか、そういうことなんだろうけど。お店はいたって普通の町の中華料理屋で、注文した麻婆豆腐定食も素朴な味だった。ごちそうさまでした。このお店みたいに、欲は無く、決して狙わず、いつも静かに笑ってもらえる。そういうものに私はなりたい。

「夕焼け新聞」掲載記事より転載

Pho Oregon

place2518 NE 82nd Ave, Portland

time毎日 9am-8:30pm

web WEBサイト

(503) 262-8816

Bun Bo Hue Restaurant

place7002 SE 82nd Ave, Portland

time毎日 9am-9pm

(503) 771-1141

Ha VL Sandwiches

place2738 SE 82nd Ave #102, Portland

time水-月 8am-4pm, 火 休み

(503) 772-0103

Pho Van

place1919 SE 82nd Ave, Portland

time毎日 11am-9pm

(503) 788-5244

Khao Soy Thai Restaurant

place2340 NW Westover Rd, Portland

time 日-木 11am-9pm, 金土 11am-10pm

(503) 384-2425

Jade Bistro & Patisserie

place7912 SE 13th Ave, Portland

time月-土 11am-9pm, 日 休み

web WEBサイト

(503) 477-8985

Kenny’s Noodle House

place8305 SE Powell Blvd, Portland

time毎日 9:30am-9pm

(503) 771-6868

夕焼け新聞
ポートランド・オレゴンの在日邦人、日系アメリカ人向け月刊フリーペーパー

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