• パン職人

  • Tim Healea

  • INTERVIEW

  • Writer Fumiko

  • Editor Ryoma

Cool Portlander:ポートランドの活気あるフード業界をリードするアメリカが誇るパン職人 Tim Healea

ポートランドのみならずアメリカが誇るパン職人のTim Healeaさん。出版業界にいた彼が選んだ次の道はパン職人でした。趣味のパン作りを職人技まで極め、2002年にはパンの世界のワールドカップ「Coupe Du Monde de la Boulangerie」で銀メダルを獲得。現在はポートランドDivision StreetとUnion Wayの「Little T American Baker」のオーナーで、2011年にはStarChefs.comにおいてPortland Rising Stars Award Winnersに選ばれました。
活気づいているポートランドのフード業界のこと、サステイナブルへの取組み、一緒に働く仲間との絆についてお話を伺ってきました。

Interview&Photos by Fumiko, Edited by Ryoma

「僕がパン職人になったのは偶然なんだよ。」

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Nパン職人の道を選んだのはなぜですか?

Tim実は大学ではジャーナリズムを専攻し、卒業後はニューヨークの出版社で働いていたんだ。でも全然楽しくなかった。もっとこの業界は面白いと思っていたのに。そんな時、食に興味を持つようになったんだ。料理をすることで気持ちが穏やかになり、故郷のシアトルを思い出したよ。そして忙しい毎日に嫌気がさして出版社を辞め、料理学校に通い始めたんだ。学校では趣味でパン作りしていたんだよ。学校ではパン作りの基礎しか教えてくれなかったから趣味のパン作りを通して発酵作業や手作業について多くを学んだんだ。そしてオリジナルのサワードゥ・スターターというものを作り出したんだ。サワードゥ・スターターというのは培養物のことで野生酵母とバクテリア(微生物)を培養させて作るパン種のことだよ。酵母とバクテリアが共存することで風味が出るし、ガスが発生してパンを膨らませてくれる。僕は自分で作ったパン種を抱えながらニューヨークの地下鉄で学校へ通ったものさ。
卒業後はプロのパン屋から学ぼうと決め、1998年にポートランドのパール・ベーカリーでインターンとして働き始めた。そこではパン作りの工程を学び、手作業をたっぷりと練習した。その頃、僕はUS Baking Teamに応募して全国大会で勝ってチームメンバーになったんだ。3人で構成された僕らのチームはフランスで開催されたパンのワールドカップ「Coupe Du Monde de la Boulangerie」で見事に銀メダルを獲得したんだ。

「コンサルタント業に戸惑いを感じた。だから自分のパン屋を開こうと決心したのさ。それは長い旅だったよ。」

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Nその大会後にお店を開く夢を持ったのですか?

Tim最初は違うんだ。約10年パール・ベーカリーで働き、ついにその機会に辿り着いたのさ。僕は少しの期間Ace Hotelの中にある”Kennie and Zukes”のコンサルタントに携わり、ベーグルやユダヤ系のパン、デザートを扱うパン屋を開いた。でも僕は毎日同じ場所で働くことを好むタイプの人間なのでコンサルタント業に戸惑いを感じた。だから自分のパン屋を開こうと決心したのさ。それは長い旅だったよ。

「職人気質のパン屋の多くは昔からある伝統的な形のパンを売っていたので、僕はなにかもっと近代的なものにしたかったんだ。」

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Nどうやってビジネスをスタートさせたのですか?

Tim”Little T”を開店する前、ヨーロッパのいくつかの国やアメリカ国内を旅して、僕がやりたいのはどんなパン屋なのか模索した。職人気質のパン屋の多くは昔からある伝統的な形のパンを売っていたので、僕はなにかもっと近代的なものにしたかったんだ。
パンの形やパン生地を使う方法はちょっと違うけど、基本は従来のやり方と同じ、高品質の材料だけを使い、手で混ぜ合わせ、そしてゆっくりと発酵させて作っている。
パンもそうだけど、お店の外観もとても近代的だろう?たくさんの窓から光がいっぱい差し込んで来るんだ。インテリアはイタリアとオーストラリアの要素を取り入れているけど、ほとんどはオーストラリアかな。僕はメルボルンやシドニーのカフェからひらめきを受けてこのお店をデザインしたんだ。

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ところで、どうしてお店の名前が”Little T”って言うんだと思う?
僕がUS Baking Teamにいた時、チームメンバーの中に同じくTimというヤツがいたんだ。マネージャーが彼と区別する為に僕のことを”Little T”と呼んでいて、それで周りのみんなが僕のことを”Little T”って呼ぶようになったのさ。だから店の名前は”Little T American Baker”と名付けたんだ。

「一番苦労したのは資金調達だったな…」

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Nお店をスタートする時になにかご苦労はありましたか?

Tim一番苦労したのは資金調達だったな…
設備投資はとても高額だったからね。パン屋を開くための開店資金を僕は十分には持っていなかった。そこで政府の連邦小企業庁(小企業に対して金融的支援を行う独立行政機関の一つ:SBA)を利用した。彼らは中小企業の資金調達のために地元の銀行に働きかけてくれたので、政府保証のもとローンを借りることが出来た。そして僕は自分のビジネスをスタートしたんだ。幸いなことに僕はそのローンを2008年のリーマンショック前に受取れたんだ。そして今年は開店7周年だよ!

「嬉しいことに僕がここにお店をオープンして以来、ディヴィジョン・ストリートはとても成長してるんだ。」

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Nどうしてこの場所を選んだのですか?

Timこれも、もう一つの偶然が重なった。初めは地価が安いノース・ウィリアムズ・ストリートで場所を探していたんだけど、僕の知り合いの建築家がこのビルの建築をしていて、彼からビルのオーナーがテナントを必要としていると聞いたんだ。この居住地域層は僕が探していたところよりもずっと所得水準が高いお客様を呼ぶことができると思ったからここに決めた。当初はこの地域は探してなかったよ、とても高かったからね。だけどなんとかやっていけるとわかった。嬉しいことに僕がここにお店をオープンして以来、ディヴィジョン・ストリートはとても成長しているんだ。ここにはPokPok、Ava Gene’s、Avignonなどの人気レストランが軒を連ねていてポートランドでも最も地価が高い場所なんだ。

「毎年夏にジャパン・ホーム・ベーキング・スクールで講師向けに開催されるセミナーで教えていたんだ。」

Nアジアでパン作りを教えていたということですが、どちらの国ですか?その時の経験を少しお聞かせ願えますか?

Timほとんどが日本だよ。東京には何度も訪れたし、他には名古屋、京都、札幌、福岡、マレーシアのクアラルンプールにも行ったよ。アメリカンクランベリーをパンやペーストリーにどうやって使うのかということをセミナーで教えていた。それから毎年夏にジャパン・ホーム・ベーキング・スクールで講師向けに開催されるセミナーで教えていた。その学校は毎年夏に海外から講師を呼んでセミナーを開くんだ。2009年には日本で6週間も教えたよ。色々なパン屋にも訪れた。デパートに入っているチェーンのパン屋は見やすかったな。

「近代的なパン屋という僕のコンセプトのひとつは、世界中のパンに注目することなんだ」

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Nお店にはヨーロッパやアメリカなど、色々な種類のパンがおいてありますね。

Tim近代的なパン屋という僕のコンセプトのひとつは、世界中のパンに注目することなんだ。どうしてアメリカのパン職人になることが素晴らしいのかというと、僕らは世界中の伝統技術を使うことが出来るからなんだ。ヨーロッパのパン職人は、ヨーロッパのパンのみに普通フォーカスしているんだけど、僕らは世界各国のパンを作っている。時には日本のメロンパンみたいなパンも作ったりするよ。僕の理解ではメロンパンはシンプル。メロンエッセンスは使わずクッキー生地を載せたプレーンな味のメロンパンを作るよ。

「バゲットは一番シンプルなパンだからこそ作るのも一番難しいんだ。」

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Nお店の人気商品を教えてください。ティムさんのお薦めはどれですか?

Tim人気商品はバゲット、プリッツェルパン、クロワッサン、フルーツデニッシュ。フルーツデニッシュは季節のフルーツしか使わない。だから季節ごとに中身が変わるよ。夏はフレッシュベリー、チェリー、アプリコット、プラムを使うし、秋には梨やリンゴを使う。
僕のお薦めはバゲット。お店の一番人気でお薦めだよ。バゲットは一番シンプルなパンだからこそ作るのも一番難しいんだ。

「僕ができる最大の取組みは地元の納入業者から材料を仕入れること。」

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Nポートランドはサステイナブルやエコで有名ですが、こちらのお店では何かそのような取り組みはされていますか?

Tim僕ができる最大の取組みは地元の納入業者から材料を仕入れること。もし僕が地元以外の納入業者から仕入れると、その輸送に使うガソリンによって炭素ガスがたくさん発生して汚染の原因になってしまうよね。小麦はオレゴン州に近いアイダホ州から仕入れているけど、その他の材料はほとんど地元のものを使って炭素ガスの発生を低くするように努力している。

「いまポートランドのフード業界はとても活力に満ちている。ここにはいつも何か新しいものがある。」

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Nポートランドは今大人気で街もどんどん変化していますが、フード業界にもなにか変化がありますか?

Timその通りだね!ポートランドのフード業界はとても活気づいて来ている。ポートランドにはアメリカでも素晴らしいとされるレストランがいくつもあると思う。ここには才能あふれるシェフがいる。ポートランドは大都市サンフランシスコやニューヨーク、ロサンゼルスと比較して生活費が安い。だから才能のある人々が来てフードカートや小さなレストランをオープンしたり、独創的なものを表現したりしている。いまポートランドのフード業界はとても活力に満ちている。ここにはいつも何か新しいものがある。だからとても面白い。ポートランドはアメリカで最も面白い場所のひとつになったと思うよ。手軽に訪れることができる場所だし、食べ物は良心的な価格。レストランは高級過ぎず、気取り過ぎない。僕らフード業界の人間はすぐ近くで育てられた様々な野菜やフルーツなど、質の良い材料を容易に手に入れることができる。

「ポートランドではシェフ同士の関係がとても良いんだよ。」

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N他のレストランやパン屋さんとの交流はあるのでしょうか?

Tim特にレストランとは関係が深いね。ポートランド中心地のレストランにパンを卸しているからね。僕はお客様のレストランを訪れるのが好きなんだ。そしてそこのシェフと友達になるのさ。ポートランドではシェフ同士の関係がとても良いんだよ。僕が卸しているお客様はAce Hotel、Beasts、Laurelhurst Market、Bar Avignon、Cheeze(downtown)など。他にもたくさんのお店があるよ。

「働く者同士の絆がある。だから僕らは家族のようなものなんだ。もし家族が大きくなりすぎると管理するのが難しくなる。」

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N今後、国内や海外に更にお店を増やしていく予定でしょうか?

Timいや、今はその予定はないよ。僕は自分のビジネスを始めたことで、より規模の大きなフードビジネスをやることがいかに難しいかってことを知った。現在、19人の従業員が働いるんだけど、僕と彼らは全員、お互いのことをちゃんと知っているんだ。だけどもし僕のことを直接知らないで働いている人たちがいたとしたら、彼らは僕と同じような気持ちで仕事に打ち込んだりはしないと思う。働く者同士の絆がある。だから僕らは家族のようなものなんだ。もし家族が大きくなりすぎたら管理するのが難しくなる。ここで働いてくれている人達の多くは何年も僕と一緒に仕事をしている。そして僕らが成功した理由のひとつは近所の方達がお店を訪れてくれて、家族のように毎日顔を見せてくれるからなんだ。規模を大きくすることの怖さは商品の質を同じように保つことが出来るのか?ということ。そしてもっと難しいのは、今のようなフレンドリーなサービスを提供できるのだろうか?ということなんだ。
僕にとっては「バランス」が大切なんだ。僕らはお金を稼ぎたい、でもそれと同様仕事を通して素晴らしい経験をしたい。仕事というのは自分の人生の多くの時間を費やすものだから仲間と楽しく一緒に働きたい。それが僕にはとても大切なことなんだ。

Little T American Baker

web WEBサイト

Division店

place 2600 SE Division St. Portland, Oregon97202

time月 – 土: 7am – 5pm, 日: 8am – 2pm, メモリアルデー: 8am – 2pm

TEL:(503) 238-3458

Union Way店

place1022 W Burnside St. SUITE O, Portland, Oregon97209

time月 – 金: 8am – 5pm,土 – 日: 9am – 5pm, メモリアルデー:Closed

TEL:(503) 894-8258

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