• Ken Wright Cellars

  • 石田美寿々

  • INTERVIEW

  • Writer Fumiko

  • Editor Ryoma

Cool Portlander : 世界に誇るオレゴンワインvol.2 (Ken Wright Cellars:石田美寿々さん)

創業明治七年、老舗酒店『坂口屋』の次期6代目当主となる石田美寿々さんは2011年にオレゴンのKen Wright CellarsのオーナーKen氏との出会いをきっかけに渡米。Ken氏のもとで働きながら大学に通い、ワイン作りとワインビジネスを学んでいます。初めてオレゴンに来た時にはほとんど英語を話せなかった美寿々さん。血のにじむような努力と強い精神で英語を習得し、今ではワイナリーの重要なスタッフの一員として世界中から訪れるお客様にKen氏のワインを紹介しています。美寿々さんのオレゴンワインに対する思いとご自身が将来継ぐこととなるご実家の商売への思いを語って頂きました。Interview&Photos by Fumiko, Edited by Ryoma

「うちのワイナリーにインターンとして来ないか?1週間でも、1ヶ月でも、1年でも君がいたいだけいて良いよ」

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NオレゴンのワイナリーKen Wright Cellars(ケン・ライト・セラーズ)で研修生として働くことになったキッカケはなんでしょうか?

Misuzu大学卒業後、「オルカインターナショナル(以下オルカ)」というオレゴンとワシントンのワインをメインに扱う会社に入社しました。オレゴンやワシントンのワインは日本ではまだあまり認知されていません。なのでオルカでは、現地のワインを広めるためにワイナリーの方達に日本に訪問してもらい、様々な活動をして頂いてます。そんな活動の中、Kenと初めて会ったのは2011年4月の東日本大震災チャリティイベントでした。
その当時、私は全く英語を話せなくて…「Hello」も危ういくらいだったので同僚がKenの話すことを通訳してくれました。
「美寿々は日本語しか喋れないから英語を喋れるようになった方がいいよ。そのために一番手っ取り早いのはアメリカに来ることだよ。だからうちのワイナリーにインターンとして来ないか?1週間でも、1ヶ月でも、1年でも君がいたいだけいて良いよ。」と誘ってくれたんです!

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Misuzuオルカの社長ジェフに頼んだところすぐにKenに連絡を取ってくれました。そして私はオルカに在籍したまま3ヵ月間オレゴンに行くことになりました。その話を頂いたのは4月だったのですが、実は私、翌月の5月に入籍予定で8月に結婚式が決まっていたんです。
主人に相談したところ彼はちょっと呆れ気味でしたが「好きにすれば」と言ってくれて、結婚式の1週間後にオレゴンに渡りました。それが2011年9月。その年はすごく冷涼なヴィンテージ(年)で収穫が例年になく遅かったのです。11月に収穫したのですが、何十年ぶりという遅さだったようです。

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Misuzu収穫を手伝うために9月に渡米したのですが、そういうわけで1ヶ月くらいなにもやることがなくなってしまいました。そこでテイスティングルームでお手伝いすることになりました。テイスティングルームでお仕事するには英語が喋れないといけないのでKenの友人がマンツーマンで私に日常英会話とお客様とのコミュニケーションの取り方を教えてくれました。
英語の勉強の他にも、オレゴンではアルコールをサービスする為にOLCC(Oregon Liquor Control Commission)という証明書が必要なので1ヶ月間でその試験の英語を頭に叩き込み、なんと100点満点で合格したんです!3カ月間の滞在の最後の方はテイスティングルームにいらっしゃるお客様への対応からお会計まで一人でできるようになりました。

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Misuzu2011年最後の収穫が終わりオルカに戻ってからは元々の部門からセールスに移動して働きました。外国のお客様も多いので英語を使う機会は多々ありました。でもKen Wrightで学んだことをうまくお客様に伝えられない自分が情けなくて「オレゴンに留学したい。」と思うようになりました。そして2013年夏にオルカを退職してその秋に今度はダンナも連れてオレゴンに来ました。

「私が説得しても全然ダメだったのに男同士ってすごいなって思いました」

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Nご夫婦での渡米というのはすごい覚悟ですね。

Misuzu彼は英語が大嫌いだったので最初はアメリカに行くのをすごく嫌がっていました。でも私の父親が男同士で話しをして説得してくれたんです。父親は自分が英語を話せなかったので「英語ができたらもっとやれることがあるし、Ken Wrightで働きながら学校に行けるなんてこんなに良い機会はない。」と言ってくれて。私が説得しても全然ダメだったのに男同士ってすごいなって思いました。

「英語でコミュニケーションを取ることで他の国の方達へ日本のことをちゃんと伝えることができます」

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N英語でテイスティングのお仕事をしていて楽しいと思うこと、大変だと思うことを教えてください。

Misuzu楽しいと思うことは世界中の色々なお客様とコミュニケーションを取れるようになったことです。テイスティングルームにはオレゴン州の人だけじゃなく、色々な州や国からお客様がいらっしゃいます。そんなお客様達から様々な話が聞けることが楽しいです。テイスティングルームにいらっしゃるお客様は日本好きの方がとても多いので英語でコミュニケーションを取ることで他の国の方達へ日本のことをちゃんと伝えることができます。日本のことが好きでもまだまだ日本について勘違いされている方も多いんですよ。例えば「お侍さんいる?刀持ってるんでしょ?」とか、「2011年の大震災で家がなくなったからアメリカに来たんでしょ?」日本では全ての家が流されてしまったと思っている人も結構いるんです。
大変だと思うことは自分の言いたいことがなかなかきちんと伝わらないことです。ネイティブのように喋るのは難しいと思いますが、自分の思いやKen Wright Cellarsの思いがお客様に少しでも伝わればいいなと思っています。一生もどかしいものかもしれないですけどね。

「オレゴンのワイナリーと日本のマーケットの懸け橋になれたらいいなと思っています」

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NChemekta Community College(チェメケタ・コミュニティ・カレッジ)でワインの勉強をしたこと、ケン・ライト・セラーズで研修生として学んだことを将来どのように活かしていきたいですか?

Misuzu私の実家は『坂口屋』という業務用酒販店です。酒類の輸入と卸しをしています。自社輸入したワインを卸すこともしているし、インポーターさんや酒蔵さんからお酒やワインを買ってレストランやお店に卸したりもしています。両親がお店をやっているのですが、自分達がワインを輸入する時に英語を喋れないので、もし英語が喋れたらもっとビジネスが広がると思い、私がアメリカに行くことを後押ししてくれたんです。
私は三姉妹の長女なので将来6代目として会社を継いで行くつもりです。そのために、今ここで勉強しながら働いて、このワイナリーで学んだ経験や英語の経験を父親の会社『坂口屋』のために活かして行きたいと思っています。そして私の後の世代、7代目、8代目、そして永遠に続いていけるような会社にしたいんです。私の代で絶対に潰したくない。うちの父親が現在ある程度軌道に乗せてくれているのでそれを崩すのではなく、小さくてもいいから長く続いていける会社を作っていきたいなと思っています。そのために頑張ります!

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Misuzu私の夢の1つはうちには男の子はいないけど、せっかく三姉妹なのだから、三人がそれぞれに合った役割を担い、みんなで家の家業を守り続けていくことです。
もう1つの夢は「アメリカと言えばオレゴンのピノだよね」と日本の人に言ってもらえるようになることです。今はオレゴン、ワシントンのワインを売るってすごく難しくて、何かコメントをひと言加えないと売れないものなんです。でも1回味わって頂くとリピーターになってくれる方はすごく多いんですよ。でも最初の一口を飲んでもらうまでが本当に大変で。日本での認知度は上がって来てはいるんですけど、まだまだ知らない方が多いのが実情です。例えばワインリストにフランス、カリフォルニア、オレゴンと並んでいたらやっぱりオレゴンは負けてしまうんです。でも将来ワインリストを見たお客様が「あら?オレゴン産は入ってないの?」とおっしゃってもらえるくらい日本人にオレゴンのワインが愛されるようになったらいいなと思っています。そうなれるようにもっとここで勉強してオレゴンのワイナリーと日本のマーケットの懸け橋になれたらいいなと思っています。

Ken Wright Cellars Winery

place 120 N Pine St. Carlton, OR 97111

time 日 – 木 : 11am – 5pm, 金– 土 11am – 6pm

webWEBサイト

TEL:503-852-7010

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