• The founder, piano/voice teacher at Resound

  • Daniel Buchanan

  • INTERVIEW

  • Writer Kiyora

  • Editor Ryoma

誰もが、安心して歌える場所。Resound NW: A Place To Sing

ダニエル・ブキャナン 
Daniel Buchanan; The founder, piano/voice teacher at Resound NW

青い屋根の小さな家。扉を開けて入った瞬間から、温かく迎え入れてくれる、ダニエル。私が去年から通っている、歌の教室Resound NWの先生だ。初めは、聞きやすい話声になりたくて、ボイスレッスンを受けていたのだけど、気がついたら、歌で表現する世界に引き込まれてた。生徒の間でミラクルメーカー(奇跡を起こす人)との異名を持つ彼に、インタビューしてみました。

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Nダニエルは、何歳から歌ってるの?

Daniel僕は、教会で育ったんだ。両親とも、牧師だったからね。物心ついた頃には、もう歌ってた。3歳の時は、教会でソロを歌ったんだよ。 マイクが高すぎて届かないから、ピアノ椅子の上に立ってね。両親も楽器を演奏したり、音楽を教えたりして、音楽一家だった。ピアノも3歳から始めた。

音楽を仕事にしようと決めたのは、高校生のとき。図書館で、オペラのビデオテープを借りて見たとき、「やりたいのはこれだ!」って思ったんだ。オペラのドラマ性に惹かれた。それで大学と大学院で音楽を専攻した。幸運にも、これまで仕事といえば、音楽のことしかしたことないんだよ。でも、一口に音楽とは言っても、演奏したり、教えたり、ピアノ弾いたり、コンテストの審査員もしたり、あと合唱団の指導とか、いろんな違うことをやってきたけどね。

Nそうなんだ。今までで大変だったことはある?

Daniel一番辛かったのは、大学院を卒業してから、歌を仕事にしようとしたとき。学生時代は、やることは向こうから用意してもらえるでしょ。これやりなさい、あれやりなさい、って。でも、卒業したら、自分で探さないといけない。自分のイメージの中では、ステージの上で、衣装をまとってオペラを歌ってる自分がいた。でも実際には、合唱団で歌ったり、学生に教えたり、教会でゴスペルクワイヤーを指導したり、バンドの一員だったりする自分に気づいて、初めは『失敗した』って思ってたんだ。まるで、オペラを歌うためにドレスアップしているのに、どこへも行く場所がないような、そんな感じ。夢を実現しようとして、多くの場所にコンタクトも取った。

プロのミュージシャンとして、もうやっているじゃないか

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Danielそんなある日、自分のスケジュールをチェックしてて、ああ、この日はリハーサル、この日は生徒に教える日、この日は教会で指導する日、って。で、気づいた。自分は、 プロのミュージシャンとして、もうやっているじゃないか って。必ずしも、初めに思い描いていたのとは、違った形ではあったけれども。

当時テキサスに住んでいて、そこで妻と出会って、二人でポートランドに行こうと決めて、移り住んだ。6年前ね。プログレッシブな雰囲気、文化、自然の景色、気候、美味しい食べ物、都会的なのに、大きすぎない街のサイズ、徒歩や電車であちこち出かけられるライフスタイル、どれも素晴らしいと思った。

でも 僕たちには、お金がなかったんだ。その日買い物をすませたら、銀行に15ドルしか残ってなかった。妻が、おなかをすかせて仕事から帰ってきて、 はたと気づいた。これからどうしよう!って。それでインターネットでフードバンクを探した。ポートランドに住み始めた僕たちは、幸せで、楽しくて、ポートランドは素晴らしい土地だけど、生活するのは大変だった。自分たちは、本当にフードバンクを探しているのか?と疑問に思った。本当に、自分たちがこんな状況になるなんて、想像もしなかった。人生が、ずっとそんな状況にある人たちも、たくさんいる。お金がなくて、頼るものもない人たちが。その時自分たちは『やりたいことをやらなきゃいけない』と思ったんだ。

やっているのは、歌を使ったセラピー的なこと

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Nどんな音楽教室をやっているの?

Daniel僕たちは、クレイグス・リストCraig’s Listに『歌教えます』と載せた。ここノースウェストの小さなアパートで、電子キーボードで。初めは一人の生徒だったのが、2人、3人、8人となって。あ、当時ポートランドオペラでも仕事してたけどね。教え始めて半年経った頃に、歌の集まり も開いたよ。自宅のリビングルームでね。この前君が来てたのは、生徒が100人ほどで、先生も数人いたよね。当時からの生徒も来てたんだよ。

気づいたのは、多くの歌の先生達は『舞台でのパフォーマンス』を教える。でも、歌うのは好きだけど、実際には、そうするつもりのない人たちが、たくさんいるんだよ。そんな人たちのための場所が、必要だと思った。そして、僕がやっていることの多くの部分は、歌を使ったセラピー的なことなんだ。

歌を通して、彼らの心が開放されて行くのが分かる。それに、歌うことで、自分自身を発見していく。体がどう感じているかとか、自分自身をどう表現してるのかを、観察するとか。正直言うと、こういうアプローチをしている歌の先生は、あまりいない。彼らはもっと舞台でのパフォーマンスに重きを置いていて、最高の演奏ができることに集中している。これは、ある人たちにとっては、辛いことになりうる。ただ自分自身を表現したいだけなのに、ステージに上がって演奏しろ、と言われることがね。

だから例えば、ソングスタジオを作ったんだよ。歌を通して、もっと自分自身を、心を、シェアする場所として。プロの表現者になるためではなく。もちろん、とても上手くて、高レベルの演奏をする人たちもいる。もちろんそれに反対はないけど。誰でも、歌うことができる場所で、まったくの初心者とか、あまり強い声が出ない人とか、音楽を全然知らない人とかでも、歌うこと自体に、価値があるからね。

受け入れるよ。あなたのそのままを。それがどんな歌い方であっても

Nいいアイデアだと思う。歌うことで認められる場所をみんな求めていたんじゃない?

Danielうん、それに、コミュニティーの一員となることも大きいね。先生に対して歌うだけじゃなくて。みんな 受け入れられたい、と思っている。そして聞く人達が心をそこに持っていく。歌うことで、癒されるんだ。歌を通して自分自身をシェアして、人々が『はい、受け入れるよ。あなたのそのままを。それがどんな歌い方であっても』ってね。

Nその考え方は、 自然に出て来たの?

Daniel大学院でオペラをやっていたから、その時の経験からだね。学生たち同士でパフォーマンスし合うというのは、良くあるんだよ。でもここでは、癒しの体験を重要視してる 。そういう空間を創り出すことに。

N歌を通して癒し体験をしてもらうために、どんなことをしてるの?

Daniel安心できる環境にするために、十分時間をかけているよ。こんな風に歌ったら、あんな風にしたら、というアドバイスをするよりもね。彼らが、ありのままの声を受け入れられるように 。もちろん、良くなろう、強い声が出せるようになるのをめざして歌うわけだけど、大切なのは、そのままの声に感謝する、ということ。変な声が出ても「ありがとう、この声を出してくれて」って風に。

最近、ある俳優さんと話したんだけど、彼女の学校では、攻撃されてるように感じるんだって。その先生は、生徒を脆くして、壊して、そして作り直す、という考え方で。彼女がソングスタジオに来て、僕が、生徒のありのままの表現に感謝しているのを見て、嬉しかったって言うんだ。どんな種類の努力に対しても、感謝を表すことに。演奏の後、すぐに『それは良くない』って、こきおろす代わりに『トライしてくれて、ありがとう』ってね。

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Nダニエルは、生活の中でも感謝の表現を大切にしてるの?

Danielうーん、どれくらい深く話そうか(笑) 
僕たちは、大人として生活してるわけだけど、心の一番深いところには、子どもがいるでしょ。それが、僕自身の生き方のアプローチ。大人の自分がどう感じるか、子どもの自分がどう感じるか、分けてみて、子どもの自分が言いたいことの方を尊重する。そんな風に生徒達にも接するんだよ。子どもの部分の彼らを尊重する。とても心理学的なやり方だけどね。

Nなるほどね。

Danielちょうど、子ども達が何人か集まって遊んでいるような、そんな場を作っている。みんな子どもの、繊細な部分を見せ合って、遊んでいる感じ。

N私自身ソングスタジオに来るたびにそんな雰囲気を強く感じてた。安心感のある空間をどのようにして作ってるの?

Daniel面白いね。それは、良く聞かれるんだ。「この安心できる環境は、どうやって作るの?」って。で、自分でも考えてみたんだけど、うーん、自分のためにやってきたこと、かな。自分自身を癒し、ケアしてきたから。それと、人々の進歩を見るのが好きなんだ。まったくの初心者から、信じられないほど上手くなったり、歌うのをすごく怖がってた人が、楽しく歌えるようになったり。

で、その人の歌や、歌うことについて聞くと、その到達地点までの線が視覚化されて『あ、この人は、まさにこの地点にいる!』って、分かるんだ。そして僕は、この地点から、あの地点まで行くのを助けよう、って。また別の人は『あ、その地点だ!』ってね。僕は、その人のいる地点まで 行き、そこに一緒にいるんだ。その線全体を遠くから見て、比較するのではなくて。その人がいる地点に飛び込んでいって『うん、それでいいよ』って言う。それを楽しんでいる。その進歩を楽しんでいる。

Nまるで、地図を持っているみたいね。

Danielうん、そうみたいだね 。今気付かされた(笑)

Nダニエルはどんな子どもだったの?

Daniel小さな頃から、友達がいない子に、こっちにおいでよ、って言うような子どもだった。僕は恥ずかしがりやで、あまり外向的ではなかったけど、全員が、グループの一員だと感じられるようにいられることが、とても大切だった。

自分には、人を歓迎する才能があると思うよ

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Nなぜそんなことを聞いたかというと、強みってあるでしょ。本人にとっては当たり前すぎて、強みだと気づかなかったりする。

Danielああ、それはあるね。確かに。自分には、人を歓迎する才能があると思うよ。元々持っている性質かな。自分では、そんなに良くできてるとは、気づかないものだね。

ポートランドを離れることは、全然考えられないよ

Nではここから未来の話へ。これから何をしたい?

Daniel色々あるけど、曲を書いて行きたいね。それから、ソウル・シンギング・プログラムをもっと発展させたい。より多くの人に、支え合う環境で歌うことの『力』を感じてもらいたいんだ。一方で、個人レッスンも。オレンジとりんごのようなもので、それぞれいい面があるからね。

僕たちがポートランドを離れることは、全然考えられないよ。妻もビジネスを展開しているし、両親もこっちに引っ越してきた。それから両親の友達までもね 笑 僕たちがいるから、というより、ポートランドという土地のせいだね。そして、もっとたくさんの人々が、ポートランドの魅力を発見して、この街に集まって来ているんだ。

Resound NW

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