ブードゥー・ドーナツのキャット・ダディに聞く【前編】―ヘンテコ・ドーナツショップができるまで

ベーコンを乗せたドーナツ、呪いの人形ドーナツ、”どピンク”なお店のカラー。ご存知ポートランドが誇るヘンテコ・ドーナツショップ「ブードゥー・ドーナツ」を作った人はやっぱり破天荒だった。

トレース・シャノン(写真右の人)と、”キャット・ダディ”ことケネス・ポグソン(左の人)。友人同士だった二人が2003年に始めたブードゥー・ドーナツは、今や西海岸で一番大きなドーナツチェーンになった。

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生粋のポートランダーであるトレースはGreat Showman、そしてテネシーで生まれ育ったキャット・ダディはGreat Businessmanという名タッグ。

そんなオーナーの一人、キャット・ダディにこんな疑問をぶつけてみた。

「なんでブードゥー始めたの?」
「なんで日本進出?」
「なんであだ名がキャット・ダディ?」

そもそも「ブードゥー・ドーナツってなにそれおいしいの?」という方は、「特集第一弾! ポートランドいち有名なお店。初心者のためのブードゥー・ドーナツ講座」を見てくださいね。

なんでダウンタウンにドーナツ屋がないんだ?

―ブードゥー・ドーナツを始めたきっかけは?

トレースとは、夜な夜な飲みながら、色んなビジネスアイデアを語り合ってたんだ。その頃、僕はバー・マネジャーで、トレースはナイトクラブのブッキング・マネジャーだった。そう。働いていたのは、今ブードゥーがあるエリアさ。

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ある時不思議に思ったんだ。なんでドーナツ屋がないんだって。いや、もちろんポートランドにはあったよ。でも、ダウンタウンには無かったんだ。

それ以前にバーテンダーをしていたこともあったんだけど、その頃、職場のバーと家の間にドーナツショップがあった。午前3時に12時間の仕事を終えて、疲れ果てて帰ってくるといい匂いがする。その時思ったんだ。この時間にドーナツが食べたいって。しかもバーの近くにあると、もっといいなって。

―小さい頃からドーナツは身近だった?

僕のホームタウンのテネシーではそうだったね。近所には名物おばさんのいるベーカリーがあった。たくさんのティーネイジャーが彼女の作るドーナツを心待ちにしてた。そんなカルチャーで育ったんだ。

でも、ポートランド生まれのトレースには、そこまでドーナツは身近じゃなかったみたいだけど。

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戦場の兵隊にドーナツを配ったんだ

―どうしてアメリカではこんなにドーナツがポピュラーなの?

ドーナツの起源がどこなのかは色んな説があるよ。アジアから来たって説もある。アメリカンスタイルのものは植民地時代に始まった。その頃のは、中まで火が通らなかったんだよね。それで穴を開ける工夫が生まれたんだ。

第一次世界大戦では、Salvation Armyが戦場の兵隊にドーナツを配ったんだ。それはもうすごい量のドーナツをね。そんなこともあって、ドーナツはカルチャーの一部になった。同じことは第二次大戦でも起きた。戦後には、たくさんの兵士がドーナツのビジネスアイデアを持ち帰って、ドーナツショップをオープンさせた。こうしてドーナツは、アメリカのクラシックなメニューとして定着していったんだ。

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しばらく人気が下火になったこともあったけどね。クリスピー・クリームがブームに火を付けた。でも彼らは会計スキャンダルを起こして一気にシェアを失ってしまったんだ。まだ生き残ってはいるけどね。そんな時に、新しいドーナツショップが必要だって直感したんだ。もっとクールで、クレイジーで、そして、今までの常識じゃありえないくらいの甘さ、とかね。

ドーナツどころか、料理すらしたことがなかった

―お店をオープンさせるまでは?

ドーナツショップのアイデアを思い付いてから、僕はホームタウンのドーナツショップを訪ねたんだ。「お店を開きたいから、仕事を見せてほしい」ってね。そしたら、土曜の朝5時に来いって。それから2日間、そこで働いたよ。と言っても、ただ見てただけだけどね。それで確信したんだ。「これならできる」ってね。

二人ともドーナツを作ったことなんてなかった。というか、料理すらほとんどしたことがなかった。僕は半年間だけ、食品工場の生産ラインで働いたことがあった。それが唯一の調理経験だね。相方のトレースに至っては、キッチンに立ったことすらなかったんだから。そんな”ビジネスパートナー”をトレーニングしなきゃいけなかった。

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それでディストリビューターの知人に相談したんだ。何かいい方法ないかって。彼に紹介されてLAに飛んだよ。3日間の”ドーナツ・キャンプ”さ。と言っても、そういうオフィシャルなワークショップがあるわけじゃない。ただお店に飛び込んで、とりあえず教えてくれっていうことさ。

そこでは、こんな僕たちに一からドーナツの作り方を教えてくれたんだ。そして今や西海岸で一番大きなドーナツチェーンになった。ビッグビジネスを掴んだんだよ。

―開店してからの苦労は?

それが全然なかったんだよ。初日に3000ドルを売り上げたんだ。その日は土曜日だったんだけど、ながーい行列ができてたなあ。まあ、その2日後の月曜日には30ドルしか売れなくてショックを受けたんだけど。それでも2~3週間後には安定して4000ドルを売り上げるようになった。色んなプレスにも取り上げられるようになったんだ。

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夜10時開店、朝10時閉店

―営業時間は?

今みたいな24時間営業のアイデアは最初からあったよ。深夜の仕事帰りにドーナツ食べたいっていうのがビジネスのきっかけだからね。でもスタートした時は、僕とトレースと従業員1人、あとガールフレンドが手伝ってくれただけだったからね。24時間は無理だった。

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だから最初の頃の営業時間は夜10時から朝10時までにしたんだ。夜中にせっせとドーナツ作って、早朝の大行列に対応して、クタクタになって寝る。そんな毎日の繰り返しだったよ。

ブードゥーは”サーカス”なドーナツショップ

―成功の秘訣は?

ビジネスプランはいたってシンプルさ。フレッシュなドーナツを、”サーカス”なお店でサーブすること。サーカスって何かって?それは、お客さんに喜んで店に来てもらう、参加して楽しんでもらうための仕掛けさ。それがいかに難しいことか、どのマーケティングの教科書を見ても書いてある。でも、僕とトレースにとって、それは簡単なことだった。

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もちろん、美味しいドーナツがあるのは当然だよ。でも、それよりもサーカスが大事なんだ。お客さんが楽しい体験をしたら、家族に、友達に、そのことを話すだろう? それが一番の宣伝になるんだ。

サーカスの仕掛けの一つがEating Contest。それには2つあって、ひとつは、いつでもやってるテキサス・チャレンジ(Tex-Ass Challenge)。普通のドーナツの6倍あるジャイアント・ドーナツを80秒で食べきったらタダ。今までの記録は36秒なんだ。

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もうひとつは、First Friday Eating Contest。毎月第一金曜日の夜中にやるんだけどね。参加者はサインアップが必要なんだ。5分一本勝負だけど、メニューは毎回変わる。3つのドーナツの時もあれば、ひとつのデカいドーナツの時もある。ピーナツバターを大量に使ったドーナツの時もあったね。あれは傑作だった。ピーナツバターはとにかく喉が渇くからね。

それは法律違反だって知らなかったんだ

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これは余談だけど、開店間もない頃に考えたクレイジーなアイデアがあったんだ。ドーナツのグレーズに風邪薬を混ぜるっていうね。深い意味はないよ。ただのジョークだ。このアイデアはみんな面白いって言った。

でも役所からストップがかかったんだ。知らずに食べた人がアレルギー反応で死んだらどうするんだって。薬とドーナツの組み合わせはダメだ。それは法律違反だって知らなかったんだ。わかりました、それはもうやりませんってね。

ここは飲み屋街だから、胃薬入れるのもいいなって思ってたんだけどね。でも、ドーナツと薬の組み合わせは法に触れるからやらないけどね。でも、いまだに、アレもうやらないの?って聞く人が多いんだよ。

ブードゥー・ドーナツ特集はご覧のプロジェクト・チームでお送りします。

Fumiko:頼れる総監督。取りまとめ、写真撮影、記事執筆
Masaki:インタビュー、記事執筆
Mirei:ムービー制作、帰れま10 MC、記事執筆
Ryoma:企画書作成、記事編集
Tsubo:写真撮影、SNSプロモーション

Special thanks go to Tres, Cat Daddy, Sara, Kevin, and all the fabulous Voodoo staff. We appreciate your great help!

Voodoo Doughnut ONE(1号店)

place 22 SW 3rd Ave Portland, OR 97204

TEL: 503-241-4704
* イートインスペース無し。店外にいくつかテーブルあり。
* 駐車場なし
 

Voodoo Doughnut Too(2号店)

place1501 NE Davis St. Portland, OR 97232

TEL: 503-235-2666
* イートインスペースあり
* 専用駐車場あり

  

web WEBサイト

time 1号店、2号店ともに24時間営業

*ただしThanksgiving Day, Christmas Day, New Years Day, Groundhogs Dayのぞく
*会計は現金のみ

この他にユージーン(オレゴン州)、デンバー(コロラド州)にも店舗あり。
詳しくはWebサイトを確認してください

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