「Publication Studio」【前編】ZINEとは何か。ポートランドの小さなスタジオが出来るまで

 
「上手くいかないことがあったら笑うようにしているの
こうして2人出会ってZINEを作れることが最高の喜びだから。」

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パトリシア(Patricia,写真左)とアントニア(Antonia, 写真右)
2人は生まれた場所も違えば、育った環境も違う。
出会いは今のスタジオが生まれる前、事業を始めた頃のインターンだった。

 

「大きな出版会社は上手く機能仕切れていなくて、みんな本の未来を見出せずにいたわ。」

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空っぽの財布の代わりに、たくさんの想いを持って始めたスタジオは今やアーティストだけでなくNIKEなどの大企業とも仕事をし、2人の本は10カ国以上の国で売られている。

 

「人の出会いやアイデアが生まれる場所にしたかったの、簡単なインテリアの組み替えでスタジオはイベントスペースやバーにだってなるの。」

: 「Publication Studio」 : 扉を開けば爽やかでカラフルな世界が広がる。

大坪侑史 (Yuji Otsubo) ポートランド写真家さん(@tubotyao31)が投稿した動画 –


 

スタジオでは毎月必ず何かしらのイベントが行われる、その空間で様々な人々が出会い、情報を交換し、新たな可能性を生んでいく。ここではまさに2人のZINEによって1つのコミュニティが作られていっている。

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日本でいうところの同人誌、「ファン」+「マガジン」(fan-zin)が名前の由来である「ZINE」は80年代後半、西海岸のスケーターたちが自ら写真や詩、イラストなど自らの好きなものを集めてホッチキスで止めたものが始まりだ。小さな雑誌とも表現出来るだろうか。
別に大量生産するわけでもなく、自らが作りたい分、作れる分だけ作って届けたい人に届ける。こうして生まれる情報交換は現代のFacebookやTwitterのようなソーシャルネットワークの先駆けのようなものだろうか。

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アメリカでは有名なアーティストや映画監督がまだ無名の頃にZINEを作成していることもあり、有名な著者のZINEは希少価値の高さから高価に取引されるようなものまである。
パブリケーションスタジオにはInstagramなどのSNSで写真を使っての情報発信が流行る中、逆に文字だけのポートランドのガイドブックもあるのでチェックしてみて欲しい。

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パトリシア(Patricia)が「パブリケーションスタジオ(Publication Studio)」を始めたのは2009年に遡る。スマートフォンが少しずつその進化を見せる中、出版業界では書籍の未来について話されることが増えてきていた。

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「大きな出版会社は上手く機能仕切れていなくて、みんな本の未来を見出せずにいたわ。」

書籍に関わる仕事を考えていたパトリシアはその現状を知った時、書籍に関する新たな経済
のモデルを作れるチャンスだと考えた。

「書籍の経済は消費者のものだけでなくて、本を買う人と作るひとの新たな関係性を作ることが必要だと思った。私たちが書籍を愛しているからこそ、そのシステムをしっかりとビジネスとしても持続可能なものにしたかったの。」

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そんな彼女の言葉通り、パブリケーションスタジオでは施策として立ち上げ当時からオンデマンドでの書籍の発行を積極的に行った。現在でも作り手の要望があれば出版するし、これまでの作品をEブックの形でダウンロードすることも出来る。
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「製作の際の利益配分は私たちと共同制作者の50:50。これは誰であれ基本変わらないの、発行部数や価格は私たちと考える。作りたいという話があれば私たちのところに来て、前に日本人で作りに来た人もいたわ。様々な人と仕事をしていく中で私たちの可能性も広がって行くの。」

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今ではポートランドのライターやアーティストを始めとして、NIKEなどの企業とも仕事をする。海外でも2人のZINEは売られており、そのお店の数は60箇所を超える。姉妹スタジオはオークランドやボストンといったアメリカの他の州からスウェーデンやイギリスといったヨーロッパにも存在するというから驚きだ。

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広がり続けるPublication Studioだが、初めから何もかもが順調だったわけではない。
始まりはパトリシアがアントニアと出会う前の2009年、ポートランドのダウンタウンはエースホテル(Ace Hotel)のイベントスペース、まだ現在のスタジオがなく、朝の5時からお昼までの時間の中でパトリシアは作り手が見える空間を作る必要があった。

「毎朝、日が昇る前に印刷機をホテルのイベントスペースまで運び込んだの、まるでベーカリーのようだった。当時、私たちのスローガンの一つは『新鮮な朝を本で作る』。スペースは外から見えるようになっていたからオンデマンド用の本を作る私たちの姿を道行く人々に見てもらえるよう努力して、外から見て興味を持ってくれた人はその場で本を買っていったの。やっていることは今と変わらない。ただ今は機械を運び出す必要はなくなったけどね。」

前編はここで終了、後編ではパブリケーションスタジオは店頭販売、オンデマンド配信販売、他のお店で自らの書籍を取り扱ってもらう中で徐々にその名を広めるとともに、パトリシアはアントニアと出会い、ついに自らのスタジオを持つことになる。2人のストーリーと共に、ポートランド、そしてZINEへの思いも見て行くことにしよう。
 
「Publication Studio」【後編】2人が広げるZINEの可能性。ポートランドの小さなスタジオから世界を変えていく

Publication Studio

place 717 SW Ankeny St, Portland, OR 97205

time月 – 金 : 11am – 5pm

web WEBサイト

イベント等で営業時間に変更がある場合有り。

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