「Publication Studio」【後編】ポートランドの小さなスタジオから2人が広げるZINEの可能性

「パブリケーションスタジオ(Publication Studio)」の記事も後編へ。
自らも愛する書籍への思いを持って始めたパトリシアのパブリケーションスタジオは、アントニアとの出会いでさらなる成長を見せて行く。
ZINEとは何か?については、「Publication Studio」【前編】ZINEとは何か。ポートランドの小さなスタジオが出来るまでの冒頭を読んでみてください。

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「上手くいかないことがあったら笑うようにしているの
こうして2人出会ってZINEを作れることが最高の喜びだから!」

パブリケーションスタジオの発足当時、アントニア(Antonia)はアートカレッジの生徒だった。2010年2人の出会いはパブリケーションスタジオのインターンシップ。1年のインターンを通してアントニアはアルバイトからパートタイム、フルタイム、そして今ではパトリシアと共同でパブリケーションスタジオの経営をしている。

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「こうして共に良い仕事の出来るパートナーを見つけられたことは本当に幸運なことだったわ!素敵な仕事の出来る関係であることはもちろん私たちは最高の友達でもあるの!」

そう語るパトリシアとアントニアの笑顔が尽きることのないこのスタジオも2010年からスタートした。区画の整理されたポートランドには珍しい、脇道(アンケニーストリート:Ankeny St)に足を運ぶと、2人の作業をする姿は外から見ることが出来る。

「私たちがこの場所を見つけた時、15年間鍵屋として使われていたこの場所はすごく散らかっていたわ。壁は緑に塗られていて、足元にはたくさんの金屑、以前使われていた機材もそのままの状態だった。多くの人々の助けがあったおかげで今こうして使うことが出来ているの。」

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「ここは本当に素敵な場所だわ、なぜなら脇道の多くないポートランドのダウンタウン内において、ここは隠された宝箱のよう。だけど街の中心だから誰でもアクセスはし易いし、スタジオをお店の真ん中に置いていることはとても重要なことで誰にでもその工程が見られるようになっているの。」

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このスタジオで2人は毎日100冊以上のZINEを作っている。印刷、裁断、仕上げのスタンプまでそのほとんどは手作業で行われる。

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スタジオ内には大小様々なスタンプからZINE作成のための機材が取り揃えられている。

最後のスタンプまで手作業で丁寧に、物によってはかなり力が必要みたいです。 「Publication Studio」

大坪侑史 (Yuji Otsubo) ポートランド写真家さん(@tubotyao31)が投稿した動画 –

入って左手には2人の作ったZINEが並べられており、その場で読んで買う事も出来る。日本では製造と販売が別になっているケースが多い為、このやり方は珍しいかもしれない。

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一方右手には、これまで作られたZINEや2人の集めた書籍などが揃えられており、窓際には日当たりがいいため枯れることのないという植物が置いてあり、スペースとしての居心地をより良くしてくれる。

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「人の出会いやアイデアが生まれる場所にしたかったの、簡単なインテリアの組み替えでスタジオはイベントスペースやバーにだってなるわ。」

インテリアの配置変更はよく行われているため、読書会やワークショップなどのイベント時はもちろん久しぶりにお店を覗くと、前と異なる雰囲気に新鮮さを感じさせられることも多い。

「私たちはここを誰でも足を運べて、本を読んだり、アイデアを探したり、誰かと出会える場所にしたかった。毎月いくつかのイベントを開催しているけど、それは本で社会的な生活を作る一つの取り組みでもあるわ。スペースを持つことで実際にパブリックなものを生み出して行きたかったの。」

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ポートランドから常に広がり続ける2人のパブリケーションスタジオ。
ZINEを愛してその可能性を模索し、次々と世界を広げていく。そんな2人だからこそ聞いてみたいことがあった。

「ポートランドにはクリエイティブな人が集まるとよく言われているけど、集まった人々が街の中で上手く機能していくのはポートランドにどんな利点があるからだと思う?」

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「ポートランドの良いところは小さなコミュニティがたくさん存在していて、それがどこにあるかが分かりやすいこと、繋がりたい人と繋がりやすくて何かをしたいときにとてもやりやすい環境だと思うわ。」

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「2人はZINEを作り、またその可能性を広げている中でZINEはどんなものだと思っているの?

「ZINEの歴史は様々な可能性を私たちに感じさせてくれるわ。昔は本を出版することは容易なことではなかったの。例えば、どれだけその仕事を愛していても編集者は必要だし、そのためのお金も必要。一方で個人の自由な出版物はお金に結びつかないものがほとんどだったの。ZINEを作ることはこうした人々に出版の世界への架け橋を与えるようものだったの。」

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「ZINEによってライターやアーティストは高くないお金で小冊子を生産することができるようになった、活動家は自らの活動のパンフレットなんかも作ったわ。ZINEはツールでありテクノロジーでもあったの。それは紙切れを織り込んでホッチキスで留めるだけというシンプルな『美しさ(beautiful)』と個人からたくさんの人に想いや考えをばら撒いて広めることのできる『力(powerful)』を持っていたわ。」

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「様々な人々と一緒に仕事をして、スタジオもどんどん増えてきているけど、二人はどうやって自らの仕事を広げて来たの?」

「私たちはいつでもコラボレーションを拒まず広げているの。なぜなら、他の人が行っている活動が私たちに届いた時、それを本と掛け合わせることによってどんなことが実現出来るかに興味があるから。それは私たちの可能性を広げてくれるし、世界中でカタチにできずに困っている誰かの助けにもなると思うから。」

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2人のZINEへの思いと、ポートランドというコミュニティの見えやすい街が掛け合わされるからこそ、こうしてパブリケーションスタジオはたくさんの人々と仕事をし、多くのものを作り上げてくることが出来たのだろう。

2人が広げるZINEの可能性は、2人と共に物を、場を作り出す人々と一緒にどんどん広がっていく。脇道を通って小さなスタジオを見つけたならぜひその扉を開いて欲しい。雨の多くじっとりとしたポートランドの日でさえも2人の爽やかで楽しげに色づいた空間がそこにはあるはずだ。

Publication Studio

place 717 SW Ankeny St, Portland, OR 97205

timeMon – Fri : 11am – 5pm

web WEBサイト

イベント等で営業時間に変更がある場合有り。

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